灘(兵庫)の酒は酵母の栄養源となるミネラル分が多い「硬水」を用いるため、比較的発酵期間が短く、やや酸の多い辛口タイプの酒でした。

伏見(京都)の酒は、カルシウムやマグネシウムなど硬度成分をほどよく含んだ「中硬水」を用い、比較的長い期間をかけて発酵させています。このことから、酸は少な目、なめらかで、きめの細かい淡麗な風味を産み出してきました。

酒造用水に含まれる成分や、酒の造り方によって生まれる酒質の特徴をとらえ、伏見の「女酒」に対して灘の「男酒」、と呼ばれてきました。

水の成分だけでなく、産地の食文化も酒質に大きな影響を及ぼしてきました。伏見の酒は「京料理に合う酒」として洗練されていったのに対し、灘の酒は江戸の人々の嗜好に合う「江戸送りの酒」としてそのタイプが次第に形づくられました。
現在では、酒造技術の発達により硬水・軟水のいずれを用いても、発酵の進め方などによって辛口・甘口の酒を造り分けられるようになりました。

●軟水・硬水

ミネラル分を多く含む水を硬水、少ない水を軟水と呼び、硬度を目安に区分しています。
硬度は、水1リットル(ℓ)に溶けているカルシウムとマグネシウムの量を、炭酸カルシウム(CaCO3)の重量(mg)に換算した数値(mg/ℓ)で表します。

硬水と軟水